介護現場で作業療法士を長くされている方とお話をする機会がありました。
リハビリテーションの観点で見る介護では,ふつうの生活を送るために自立(たとえ他人の手を借りたとしても)と生活の質が大切になるということでした。生活の質=QOLは,①身体的に苦痛がない,②精神的に満足,充足感がある,③周囲の人々と円満な関係にあるということだそうです。
①は,体調のことも含まれるようです。「おなかが痛くて大好きなラーメンが食べられない!」という状態だと困りますよね。③の円満な関係とは,確執がないという意味でもあるようです。
このQOLの考え方は,高齢者の介護以外にも使えそうだと思いました。ホームにいる子どもたちにとっても同じようなことが言えると思います。まず,身体的苦痛がないということは,安心・安全感をもてる,心身が安定している状態のことだと思います。②の精神的満足,充足感があること,これはとても大切ですね。ささいな日常生活の中でもおいしい食事を食べたとか,アルバイトに行けたなど,小さなことでも喜びを見つけたり承認されたりする経験ができたらいいなと思います。③の円満な人間関係は,友人がいる,話をすることができる人がいる,つながりを感じられるということかと思います。ホームの中では,怒りなどの負の感情を出しても否定されず,意見の食い違いがあっても尊重されるという安定した人間関係を経験できる場にしたいと思います。
作業療法士さんによると,QOLが整ってくると,自発的に何かしようという行動が見られるそうです。自分のことでいっぱいいっぱいの時は周りのことが目に入らなかったのに,QOLが整ってくると周りのことにも目を向けられ,自分のできる範囲でちょっと手助けをしてくれることがあるそうです。頼まれなくてもお皿を片付けてくれるとか,気遣いの言葉をかけてくれるなどの行動がみられるということです。
自分のことにいっぱいいっぱいだと周りに目が向けられない・・・これは本当によく見られることですね。
子どもたちにとって自発的に何かをしようとすることはとても大事なことだと思います。子どもたちが自発的に行動しようとするためには,QOLが整うといったベースがとても大切だと思います。このようなベースをどう提供していくか,ホームの雰囲気をどう作っていくか。深く考えさせられました。