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マイクロアグレッションという言葉

最近,「マイクロアグレッション」という言葉を耳にしました。言葉の意味は,「小さな(マイクロ)攻撃性(アグレッション)」という意味です。人と関わるとき,相手を差別したり,傷つけたりする意図はないのに,相手の心にちょっとした影をおとすような言動や行動をしてしまうことを指すそうです。「微細な攻撃」と訳されることもあります。

その言葉や行動には人種や文化背景,性別,障害,価値観など,自分と異なる人に対する無意識の偏見や無理解,差別心が含まれていることが問題だとされています。

マイクロアグレッションの例はたくさんありますが,例えば,「アジア人だから数学が得意」,「黒人はダンスが上手い」という特定の人種へのステレオタイプ的言動もそうです。

また,日本に住んでいる外国人(に見える人)に「日本語上手ですね」,「お箸が使えるのはすごい。」等と褒めることもそうです。一見外国から来たような人でも,もう長く日本に住んでいるかもしれないし,外国語よりも日本語の方が得意かもしれない。見た目で判断し,話せないだろうという偏見を持って接することが問題だということです。

私も「日本語お上手ですね。」とか,反対に「英語が話せないんですか。」とも思ってしまいそうです。

この他にもジェンダーやLGBTQ+,障害などのマイノリティの方が受けるマイクロアグレッションもたくさんあります。

一つひとつは小さく見えても,偏見や差別構造にどう言い返したらよいのだろうかと悩んだり,そんなふうに思われるのかと悔しい気持ちになったりすると,どんどん心の中に負の感情がたまっていきます。このようなことを言われることにより疲弊している当事者も多くいて,何年たっても無意識な差別を受けることによって自尊心が喪失し,うつ,気力の低下,仕事の生産性などさまざまな悪影響につながると言われます。

多文化共生教育を専門にする大東文化大学特任教授の渡辺雅之さんは,「マイクロアグレッションはヘイトスピーチ,ひいてはジェノサイド(民族・人種の抹殺や危害を加える行為)につながっている。そのことを自覚することがまず必要で,口にしてしまった場合は真摯に反省を繰り返すことが大切である。」と言います。

私たちは,虐待に象徴されるような,さまざまな傷つきを受けた子どもたちの傍らにいます。マイクロアグレッションを言われてきた子どもたちもたくさんいるでしょう。まず,私たち自身,自分たちが持っている思い込み,決めつけ,偏見に自覚的になる必要があります。家族は仲が良いものとか親はこうあるべきなどといったことを常に問い直さなくてはいけないと思います。子どもたちに不適切な言葉掛けをしないようにしなくてはいけないと思っています。

言われたことを気にしている側に問題があるのではなくて、「社会には根強い偏見や差別があること」が問題であり,その人の苦悩の元はそこにあると渡辺雅之さんも話しています。

(管理者:D)